地域や社会に役立つために起業
〜音楽の力で介護予防を目指す介護施設の運営〜
代表:上野 拓さん
起業概要
起業 | 2021年 |
起業年齢 | 58歳 |
起業資金 | 4,000万円 |
業務内容 | デイサービス音楽介護予防施設「KEION(けいおん)」の運営 |
所在地 | 川越市 |
ホームページ | https://kawagoe-openup.jp/ |
略歴
-
- 57歳:埼玉県警察を警部で退職
- 58歳:KEIONの開業
スケジュール(例)
- 7:00 施設の開錠、準備
- 8:00 利用者の送迎
- 9:30 施設開所
- 12:00 昼食
- 13:00 利用者の皆さまと演奏、歌唱
- 15:00 体操、おやつ
- 16:30 施設閉所、利用者の送迎
- 19:00 施設の掃除
- 20:00 施設の施錠
音楽×介護施設。趣味と職業経験から生まれたアイディア
中学時代に始めたギターがきっかけで音楽にはまりました。高校卒業後に警察官となっても、そのはまりようは職場内の軽音楽クラブを作るほど。休日は数十人の同僚と演奏を楽しみました。
一方、仕事では高齢者の孤独死現場を多く経験し、「幸せとは何か?」考えるようになりました。自分にとっての幸せは「夢中になれるもの」があること。いつか大好きな音楽を仕事にしようと心に決めました。
また、退職が近づくにつれ、「孤独な高齢者が何か夢中になることで幸せを感じられないか?」という思いが強くなりました。
試行錯誤の末に行き着いたのが、音楽の力で介護予防を目指す介護施設の開設。早期退職のほうが自己資金を増やせると判断し、定年を待たずして起業を決意しました。
不安だらけの起業。専門業者による無料相談を皮切りにスタート
起業に関する相談は、介護事業者向けの支援を行う会社にしました。その会社の介護ソフトを導入(月々の使用料あり)すると、相談は無料です。
コンセプト設定、事業計画策定、地域マーケティング、物件探し、会社登記等々やることは山積みでした。対象地域を川越市と川島町に設定し、高齢者人口のうち何パーセントの利用で黒字化という収支計画も練りました。施設は居抜き店舗を活用しましたが、防音工事など改装費用が膨らみ初期投資は4000万円に。家族や親戚は反対しました。
姉がひとり「やるなら手伝うよ。」と後押ししてくれました。姉は今も一緒に働くスタッフの一人です。
音楽とドッキングした介護施設の前例がないため、介護保険指定事業者の許可申請には非常に苦労しました。
令和3年7月1日「KEION」オープン。利用者の声がモチベーションに
今は私を含むスタッフ5人で運営しています。午前9時半から午後4時半まで10人程度の利用者をお迎えします。昼食やおやつを食べながら、楽器を演奏したり歌ったり、体操やおしゃべりをして過ごします。デイサービスは、利用者本人の意思に反して家族が強引に入所させるケースも多いと聞きます。
当施設は「夢中になることで楽しく幸せな人生を送る」がコンセプト。体験や見学の結果、利用者本人の希望により入所が決定します。
「KEIONが生きがいになっている。」「次回も楽しみ。」など温かいお言葉をいただきます。自分自身も大好きな音楽を仕事にすることができ、KEIONを作ってよかったという喜びとやりがいに満ち溢れています。
収益拡大により黒字化の目処。その先の展望も
起業から1年。コロナの影響で想定どおりの集客はできていませんが、利用者数の増加により黒字化の目処が立ってきました。週1回のみ来所だった方が「また行きたい。」と何度も足を運んでくださる効果が大きいです。
ポスティングなど新規開拓に励むとともに、既存の利用者に何度でも行きたいと思ってもらえるようサービスの向上に努めています。
今後は音楽療法を勉強する学生の雇用の受け皿となるため、音楽による福祉施設をさらに増設したいと思っています。
教えて!先輩起業家
シニア起業の心得は?
- 自分が「夢中になれるもの」で起業すること
- 計画どおりにいかなくても「頑張りすぎず楽しむ」こと
- 既存のお客様を大切にすること。リピートの効果は非常に大きいです。
(掲載: 2023年1月)