〜移動スーパーで買い物困難者に“食”を届ける〜
代表:増田 和人(ますだ かずと)さん
起業概要
起業 | 2019年 |
起業年齢 | 54歳 |
起業資金 | 600万円 |
業務内容 | 移動スーパー「とくし丸」の運営 |
所在地 | 狭山市 |
ホームページ | https://www.tokushimaru.jp// |
略歴
- 日本福祉大学卒業後、狭山市役所の職員として勤務
- 52歳:狭山市役所退職
- 54歳:個人事業主として開業
スケジュール
- 月:水野地区 巡回
- 火:入曽地区、柏原地区 巡回
- 水:施設、市内全域 巡回
- 木:水野地区 巡回
- 金:施設、入曽地区、柏原地区 巡回
市役所職員から個人事業主へ。「とくし丸」にかける思い
「とくし丸」は徳島県で生まれた買い物困難者のための移動スーパーです。提携スーパーの食品を軽トラックで運び、お客様の玄関先などで販売します。
とくし丸を知ったのは、狭山市役所の職員として企業誘致をしていたとき。私が長年抱いていた”課題”を解決する手法として「これだ!」と思いました。「企業誘致?」いや、この車を市内で最初に走らせるのは自分しかいない。とくし丸の創業者ともお話したことで、一層思いが募りました。
その勢いのまま、市役所を退職し、2年後に開業。公務員を辞めたことに全く後悔はありません。
福祉経験で気づいた要介護者の”食”の調達という課題
市役所では、大学で学んだ福祉の仕事が中心でした。介護保険法の施行後は、利用者から直接相談を受けました。中でも多かったのは「ヘルパーが食材を買いに行ってよいか?」という相談。制度ではヘルパーの保険サービスとしての”買い物”に制約があります。食材がなければ食事もできません。なぜ?小さな疑問を抱きました。
その後、仕事の傍らさらに福祉の学びを深めるため、専門職大学院に通いました。様々な学びの中で、ある教えにハッとしました。
それは「要介護者が住み慣れた家で暮らすために最も大切なのは、食事が家に届く」ということ。これまでの経験と学びから、私の疑問は明確な課題に変わりました。「介護を必要とする人に良質な”食”を届けたい。」とくし丸のビジネスモデルは、まさに私の理想が体現されたもの。とても感動しました。
日々の積み重ねで結果を実感。新たな目標も
良質な”食”とは、生鮮品を使った食事のこと。加えて、玄関先まで買いに歩くことで身体機能が向上します。ケアマネージャーから「今まで歩けなかったのに、あの人変わったね。」なんて言われると、とても嬉しいです。
公務員のときは、企画部署で新しい仕事ばかりだったこともあり、毎日同じ仕事を繰り返す職人になりたいという憧れがありました。今は日々ひとつずつ積み重ねている満足感を感じます。しかし、まだまだ達成できない新たな目標があります。
「元気な高齢者」若い世代に情報発信する媒体となりたい
狭山市の高齢化率は世界でもトップスピードで進行しています。市民は先の見えない不安を抱えています。
私がやるべきことは、”食”を届けるという日々の積み重ね。さらに次のステップとして、元気な高齢者に当てたスポットライトを、若い世代に見てほしい。例えば、長寿の高齢者には共通する特徴 があります。みんな、新商品に手を出すということ。私の最高齢のお客様は97歳の女性です。この方が、とにかく商品を隈なく手に取って眺めては、新商品を見つけ出して買うのです。好奇心は健康の秘訣。元気な姿を発信する媒体として、この車が活躍できればいいと思います。
そして、いつか誰かに言ってもらいたい、ある一言があります。その一言が聞けるまで、今日も日々の積み重ねをこつこつ頑張ります。
教えて!先輩起業家
シニア起業の心得は?
- 自分を知る。何を譲れないか。
- 家族の理解
- 周囲の協力、支援
(掲載: 2022年4月)